アレルギーを持つ子どもに保育園はどう対応してくれるの?
近年、子どものアレルギーが増えています。
小さい子どもほどアレルギーによる反応が出やすいので、日々悩んでいるママは多いのではないでしょうか?
アレルギーは最悪の場合、命を落とす危険性もあります。
そのため親自身が医師による診断を仰ぎ、アレルギーに対する知識や予防・対応策などを熟知しておくことが必要です。
しかし子どもを保育園に預ける場合はどうでしょう?
保育園は集団生活です。
先生たちも、一人につきっきりになることはできないので、ちょっと心配ですよね。
そもそもアレルギーの子どもを預かってくれる保育園はあるのでしょうか?
またその場合、保育園ではどのような対応をしてくれるのでしょうか?
アレルギーのお子さんをもつ親御さんのために、現役保育士が保育園の実態をまとめました。
アレルギーのお子さんを「保育園に通わせたい」と考えている方は、ぜひ読んでみてください。
このページの目次
アレルギーの子どもへの保育園の対応
まずアレルギーのある子どもでも保育園に預けることが可能です。
その場合、預け先の保育園の職員、保護者、医療・保健機関が子どものアレルギーについて共通理解しておく必要があります。
関係機関が組織的に取り組み、アレルギーの子どもたち安全に園生活ができるようにするため、
平成23年3月厚生労働省が『保育所におけるアレルギー対応ガイドライン』を作成しました。
これを基に、保育園ではアレルギーの子どもに対する支援を行っています。
保育園選び
保育園に預ける前に、アレルギーの子どもを預けられる園かどうかを確認してください。
※なかには断られる保育園もあります。
アレルギーは命に関わる問題でもありますので、園の方針、保育士の人員不足、アレルギーの内容などで対応ができない園もあります。
またアレルギー対応可能の園でも、対応の仕方は様々です。
希望の保育園ではアレルギーに対して、どのような対応をしているか確認しておくことが大切です。
またかかりつけの医師に保育園に通わせたいという意思を伝え、判断を仰ぎましょう。
保育士との面談
子どもの保育園が決まったら、入園前に園長先生との面談があります。
その際に、お子さんがどのようなアレルギーを持っているのか、
家庭ではどのような対応をしているのかなど伝えましょう。
そのためには自分のお子さんのアレルギーの状態を、しっかり把握しておかないといけません。
特に対応が必要ないのであれば、他の子どもたちと変わりない生活を行うことが可能です。
しかし園で個別に対応が必要であれば、細かく伝えておくことが必要です。
医師による「生活管理指導表」の記入
保育園では個別に対応が必要な場合、厚生労働省が作成した
「保育所におけるアレルギー疾患生活管理指導表」を保護者にお渡しし、医師に記入をお願いしています。
(どんなアレルギー症状か、どんな薬を使っているか、園生活での留意点などアレルギーに関するいくつかの項目があります)
生活管理指導表は医師に記入してもらったら、保育園に提出してもらいます。
これにより子どもの症状や対応の仕方など把握し、全体で共通理解することができます。
環境整備・人員配置
保育園側は、アレルギーの内容によって保育園の環境を整えたり、人員を確保・配置したりと対応を考えます。
なるべく他の友だちとの差をつけず、同じように園生活を過ごしてもらいたいという思いがあります。
一人だけ隔離されたり違う活動をさせるのは可哀想ですからね。
アレルギーの子どもでも皆と楽しく一緒に活動できるような内容に変更したり、工夫したりします。
重度のアレルギーをもっている子どもに対しては、職員の数を増やしたり1対1の関わりができるような人員配置を考えたりもします。
薬の預かり・服用
保育園では薬の預かりや服用などの対応が可能です。
(※対応していない保育園もあります)
アレルギーの反応が出た際にすぐ薬を飲ませてほしい場合は、保育園で薬を預かってくれます。
どんなときに飲ませるのか、いつのタイミングで飲ませるのかなど薬の情報を保育園にしっかり伝えておきましょう。
薬の服用は、看護師が在籍している保育園もありますが、ほとんどの場合担任の先生が飲ませます。
アレルギー反応が出たときには連絡を入れてほしいと伝えておくことも可能です。
園全体で情報共有
保育園では園全体で子どもの情報共有をしています。
保育園は開園している日数が多く、1日の時間が長いので職員の振替休日や時間差出勤があります。
そのため職員の入れ替わりが多く、保育体制が頻繁に変化します。
担任の先生が不在の日は、代替の先生がクラスに入りますから、情報を共有しておくことは必須なのです。
担任先生がいなくても誰でも対応が可能なように努めています。
また保育に携わる人は、十分な知識、細やかな観察、対応能力を持つことが必要とされています。
定期的に研修を行ったり講演会に参加したり、常に新しい知識や情報を学びます。
その際に持ち帰った情報も園で共有しています。
食物アレルギーの子どもへの対応
アレルギーの中でも特に多いのが食物アレルギーです。
食物アレルギーは年齢が低いほど発症率は高いですが、
年齢が上がるとともに徐々に食べられるようになっていき、治る可能性もあります。
食物アレルギーの原因となる食べ物は低年齢児では鶏卵、牛乳、小麦の3つが特に多いです。
その他にも果物、ピーナッツ、ナッツ類、そば、魚卵、魚類、甲殻類など…。
家での対応も大変ですよね。
保育園では食物アレルギーの子どもにどんな対応をしてくれるのかまとめました。
「除去食」や「代替食」の対応
保育園ではほとんどの園が給食です。
アレルギーの子どもに対しては「除去食」また「代替食」を提供してくれる園があります。
- 除去食・・・アレルギーの原因になるものを除いて調理したもの
- 代替食・・・アレルギーの原因になるものの代わりに、食べられるものを使って調理したもの
調理の先生は栄養面も考えていますので、他の子どもと大きな差がないように工夫してくれています。
「除去食」や「代替食」に対応しておらず、アレルギーの子どもだけお弁当持参という園もあります。
我が子だけお弁当なのは可愛そうだし、親も大変ですよね…。
テーブルをわける
アレルギーのある子どもで、テーブルをわける対応をしている園もあります。
アレルギーのひどい子は食べるだけでなく、触れただけでもアレルギー反応が出る場合があるからです。
保育園では皆一緒の時間に昼食を食べます。
例えば牛乳アレルギーの子どもが他の友達と同じテーブルで食べている時、
友だちが牛乳をこぼしてしまう可能性があります。
食事中、会話に夢中になっていて口の中のものがアレルギーの子に飛んでしまうかもしれません。
ちょっとかわいそうかもしれませんが、完全に隔離して一人ぼっちというわけではないので大丈夫です。
机の端側にしたり、先生が間に入ったりします。
食器を専用にする
アレルギーのある子どもで、「除去食」「代替食」を提供している場合は、
トレイや食器を専用にしている場合があります。
配膳ミスを未然に防ぐためです。
調理の先生が細心の注意を払って調理した「除去食」「代替食」を、
配膳の段階で間違えてしまうこともあるのです。
特に担任の先生が不在時など、普段クラスに入らない先生は、情報を共有していたとしても見落としてしまうこともあります。
そのため、誰が見てもわかるようにトレイや食器などを分けたり名前を貼ったりして工夫しています。
園長・担任・調理師・保護者で面談
毎月園長、担任、調理師、保護者で面談を行います。
(園によって面談者は変わります)
アレルギーの子どもの「除去食」「代替食」の内容を確認してもらうためです。
「除去食」「代替食」は医師による診断で【解除】になる場合もあります。
医療機関で負荷試験を実施し、これ以上除去は必要ないと診断されたら、まず自宅で食べられるかどうかを試します。
家庭で一定量を問題なく食べられるようになったことが確認できたら、園でも食べさせます。
これを除去の【解除】といいます。
面談の際に、医師の診断結果や家での様子を伝え、常に情報共有をしておきまそう。
食物アレルギーは集団生活において危険な場面もある
食物アレルギーは集団生活において危険な場面もあります。
もちろん細心の注意は払っていますが、実際の現場では誤飲事故や配膳ミスなどが少なからず起きているのが現状です。
食物アレルギーの子どもにとって危険な場面をいくつか紹介します。
配膳ミス・誤食事故
1番多いのは配膳ミス、誤食事故です。
給食やおやつは毎日ですから、最も多いのです。
配膳ミスは担任が不在のときや、慌ただしく給食準備に追われているときによく起きます。
小さな子どもだと、友だちの食べこぼしを口に入れて誤食事故が起こる場合もあります。
保育園の先生達は、配膳ミスを防ぐために工夫したり、食事後の片付け・掃除を徹底したりと日々対応に追われています。
制作・遊び
制作・遊びのなかにも危険は潜んでいます。
例えば、廃材を使って制作をすることってありますよね。
しかし触れるだけでもアレルギー反応が出てしまう子どもにとっては、この廃材を使った制作は危険を伴います。
- 牛乳パック
- ヨーグルト容器
- 卵パック
- お菓子箱など
洗えば大丈夫と思うかもしれませんが、アレルギー物質は落としきることができないのです。
その場合、他の廃材で代用したり、アレルギーの子どもは自宅から持参してもらうなどの対応をしています。
保育園では小麦粉粘土で遊ぶこともあります。
小麦粉は小さな子どもが口に入れてしまっても安全なように、多くの園で遊びに用いられます。
しかし小麦粉アレルギーの子どもは遊べませんよね。
保育園では片栗粉粘土や米粉粘土、寒天粘土などで代用することもあります。
行事
保育園では1年を通して様々な行事があります。
特にアレルギーの子どもにとって危険なのが豆まきです。
豆まきは大豆が使われることがほとんどです。
また園によっては大豆ではなくピーナッツ(落花生)を使うところもあるようです。
大豆アレルギーやピーナッツアレルギーの子どもにとっては危険ですよね。
最後にどんなにキレイに後片付けしたとしても、
豆が落ちていた場所を触ったり寝転がったりすると症状が出てしまう場合もあります。
その他のアレルギーへの保育園の対応
食物アレルギー以外の対応の仕方についてもまとめました。
アレルギーは食物以外にも様々なものがあります。
- 花粉
- ハウスダスト
- ダニやホコリ
- 動物など
これらによる反応は様々ですが、保育園でも原因になる物質をできるだけ食い止め、対処するよう努めています。
アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎
アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎は、アレルギーに反応して鼻や目に症状が出ます。
- くしゃみ・鼻水・鼻詰まりなど
- 目のかゆみ・充血・涙目など
花粉やハウスダスト、動物などによるアレルギーで出やすい症状です。
保育園では動物への接触を避けたり、マスクの着用、点眼といった対応を心がけています。
気管支喘息
気管支喘息は、主にアレルギー性の炎症によって気管支が狭くなる病気です。
アレルギーを引き起こす原因物質(ダニやほこり、動物の毛)などが体内に入り、気管支でアレルギー反応が起こります。
症状としては、咳や痰が出たり、ヒューヒュー、ゼーゼーと苦しそうな呼吸をします。
症状がひどくなると気管支の内側が狭まり、呼吸困難になる場合も。
保育園では寝具に防ダニシーツを用意してもらったり、子どもがいないときに掃除機をかけるなどの対応をしています。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、もともとアレルギーを起こしやすい体質の人や、皮膚のバリア機能が弱い人に多く見られます。
皮膚が炎症を起こし、ジュクジュクして痒くなったり肌がカサカサしたりします。
アトピー性皮膚炎は汗や皮膚の汚れ、紫外線などで刺激を受けやすいため、
保育園ではこまめに体をタオルで拭いたり、日焼け止めを塗るなどの対応をしています。
またプールで使用される塩素によって、肌が刺激を受ける場合があります。
プール遊びの後は十分にシャワーで体を洗うようにしています。
子ども自身に教える
子ども自身が理解していれば配膳ミスや誤食事故の可能性も少なくなります。
アレルギーは命にかかわることなので、子どもがある程度大きくなったら、自分の体のことを教えてあげるのも親の役目ですね。
「僕は牛乳アレルギーだからお茶じゃないといけないんだ」
このように自分から発信できれば、周りの友だちも自然と気を付けてくれますよ。
自分の身は自分で守るという気持ちを持たせることが大事です。
子どもの様子は保育園と常に情報共有する
大事なお子さんを集団生活の場に預けるのは心配かもしれませんが、
保育園の先生も常にアレルギーの知識を学び、園全体で共有しています。
何かあった場合でも迅速に対応してくれるので、神経質にならなくても大丈夫です。
普段アレルギーの出ない子どもでも、体調不良や疲れによって発症する場合もあるので、
その都度保育園の先生と情報共有するようにしましょう。