赤ちゃんがはちみつを食べてはいけない理由と、食べ始めて良い時期について
はちみつ(蜂蜜)は甘くて、ホットケーキにかけて食べたり、ヨーグルトにかけて食べたりと、子供には人気の食材です。
ですが、はちみつは赤ちゃんには食べさせてはいけないということ、ご存知ですか?
厳密に言うと、1歳未満の赤ちゃんに食べさせてはいけないと言われているのです。
どうして1歳未満の赤ちゃんにはちみつを食べさせてはいけないのでしょうか?
また何歳からならはちみつを食べて良いのでしょうか??
今回はそんな疑問を解決できるよう、赤ちゃんとはちみつの関係についてまとめてみました。
このページの目次
赤ちゃんにはちみつを食べさせてはいけない理由
赤ちゃんは、生後5ヶ月~半年で離乳食が始まりますが、食べていいもの・食べてはいけない物がたくさんあって慎重になってしまいますよね。
その食べてはいけない物の中には、今回のテーマである「はちみつ」が含まれています。
このはちみつがどうして食べてはいけないのかと言いますと、はちみつの中には「ボツリヌス菌の芽胞(がほう)」が存在します。
芽胞(がほう)とは、ボツリヌス菌になる前の存在と思って下さい。
乳児の体内に入ると、この芽胞は発芽する危険性があります。そして発芽してしまうと、ボツリヌス菌が増殖して毒素を出します。
この毒素によって「乳児ボツリヌス症」という感染症になる可能性があるのです。
何歳からはちみつを食べていい?
では何歳からなら、赤ちゃんははちみつを食べて良いのでしょうか?
はちみつを食べて良いのは、1歳を過ぎてからとされています。
乳児の保育に当たる保護者,乳児を対象とする児童福祉施設等に対し,1歳未満の乳児に蜂蜜を与えないように指導すること。
乳児ボツリヌス症の予防対策について
このような報告書をもとに、厚生省は「1歳未満の赤ちゃんにははちみつを食べさせないように」という注意喚起をおこなっています。
ではなぜ1歳以上ならはちみつを食べさせて大丈夫なの?という疑問が出てきますよね。
1歳未満の赤ちゃんは消化器官がまだまだ未熟で、腸内環境も整っていません。そのような環境内にボツリヌス菌の芽胞が入ってしまうと、赤ちゃんの体内で芽胞が発芽し、乳児ボツリヌス症を発症してしまうのです。
ですが1歳以上の赤ちゃんになると、消化器官や腸内環境もある程度整ってくるので、ボツリヌス菌の芽胞が発芽しないと言われています。
ですので1歳になったら赤ちゃんははちみつを食べても良いということになります。
過去の乳児ボツリヌス症発症例の件数を国は開示しています。
内閣府の食品安全委員会の報告(平成26年10月17日)
乳児ボツリヌス症の国内発症例
- 2006年 2人
- 2007年 2人
- 2008年 1人
- 2009年 0人
データ参照:食品安全委員会
データを見てわかるのですが、国内で乳児ボツリヌス症を発症する例は非常に少ないことがわかります。
だからといって、安心するのは間違いですよ。
1歳未満の赤ちゃんがはちみつを食べたからといって、ボツリヌス症になる可能性は少ないですが、場合によっては死に至る可能性もあるので、注意が必要なことに変わりはありません。
ボツリヌス菌に感染するとどんな症状がでる?
それではこのボツリヌス菌に感染してしまうと、どのような症状が出るのでしょうか?具体的には下記のような症状があらわれます。
- 便秘になる
- 身体の筋力が低下する
- 泣き声が小さくなる
- おっぱいを飲む力が弱くなる
- 首のすわりが悪くなる
- 眼球運動の麻痺がおきる
- 無呼吸・呼吸不全になる
ボツリヌス菌に感染すると、赤ちゃんは乳児ボツリヌス症を発症します。
乳児ボツリヌス症を発症するボツリヌス菌の潜伏期間は、3~30日と長いのが特徴です。
誤って1歳未満の赤ちゃんにはちみつを食べさせた場合で上記の症状が出たら、ボツリヌス菌に感染した疑いがあります。
ボツリヌス菌は、神経系に影響を与えます。中枢神経系が冒されるので、便秘が続いた後に、神経麻痺をおこしたり、痙攣したりすることがあります。それにより無呼吸になり、最悪の場合は死に至ることもあるのです。
非常に感染率の低い症状ですが、ボツリヌス菌で死に至ることを考えると、1歳未満の赤ちゃんにははちみつを与えてはいけませんね。
乳児ボツリヌス症の治療法
乳児ボツリヌス症は、呼吸筋麻痺を引き起こすことがあるので、呼吸器官の管理をおこないます。しばらく続く便秘には、抗菌薬を投与して除菌することがあります。
他にも毒素を中和して中毒症状を抑える抗毒素療法や、抗生物質によって治療する方法があります。
ですがこれらの方法は、赤ちゃんの体に負担がかかるので、おこなわれないことがほとんどです。
後遺症は残る?
治療をおこなった後の後遺症についても心配になりますよね。
乳児ボツリヌス症の致死率は1〜3%と低く、病院で適切な治療をすれば後遺症もなく完治します。ですので後遺症に関しては心配する必要がありません。
しかし完治するまでの間は、赤ちゃんの便からボツリヌス菌が排出されますので、ママが二次感染しないように注意が必要です。
はちみつを食べてしまった時の対処法
1歳未満の赤ちゃんに、誤ってはちみつを食べさせてしまった時の対処はどうすればいいのでしょうか。
厚生労働省のデータによると、国内で販売されているはちみつの中から、ボツリヌス菌が検出されている割合は6.7%と低く、はちみつを食べたからといって、必ず乳児ボツリヌス症を発症するわけではありません。
(データ参照:ボツリヌス菌汚染実態に係るデータ)
ですので赤ちゃんがはちみつを食べてしまったからといって、焦る必要はありませんが、乳児ボツリヌス症を発症する可能性はありますので、病院の診察を受けましょう。
先程お話したように、乳児ボツリヌス症を発症するには潜伏期間があります。食べた直後に何も異変がないからといって安心はできません。
医師から指示を受け、赤ちゃんの経過観察をおこない、様態が急変した時のために備えておくようにしてください。
ママがはちみつを食べると母乳に影響は?
母乳で赤ちゃんを育てている場合、ママがはちみつを食べて大丈夫?と心配する人もいますが、授乳中にママがはちみつを食べても赤ちゃんに影響はありません。
なぜなら分子の大きいボツリヌス菌の芽胞が、血液や母乳に混じることはないからです。
授乳によって赤ちゃんが乳児ボツリヌス症を引き起こすことはありませんので、ママははちみつを食べることに何の問題もありませんよ。
はちみつからボツリヌス菌を死滅できる?
菌は加熱をすれば死滅できるイメージがありますよね。ですのではちみつに含まれるボツリヌス菌も、加熱すれば死滅させられると考えるのは不思議ではありません。
しかし残念なことにボツリヌス菌は、熱にとても強い菌なのです。
ボツリヌス菌を死滅させるには、120度で4分間以上加熱しなくてはなりません。ですがはちみつを120度で4分間加熱すると、焦げてしまいますので不可能と言えます。
それにはちみつの栄養素は、約45度の加熱で成分が変化し、約65度の加熱で壊れてしまいます。
ですのではちみつからボツリヌス菌を死滅させることは不可能ですし、加熱することではちみつの栄養素もなくなってしまうので、1歳未満の赤ちゃんにははちみつを食べさせないことが1番の感染予防になります。
まとめ
はちみつの中には、ボツリヌス菌の芽胞が含まれている可能性があります。
ボツリヌス菌の芽胞によって、消化器官・腸内環境が整っていない1歳未満の赤ちゃんは「乳児ボツリヌス症」を引き起こす可能性があるのです。
はちみつ入りの食品パッケージや、母子手帳にも、1歳未満の赤ちゃんにははちみつを食べさせないようにと書かれていますので、1歳未満の赤ちゃんがはちみつを口にしないよう注意しましょう。
1歳以上なら消化器官・腸内環境が整っており、はちみつを食べても乳児ボツリヌス症を引き起こすことはありませんので、赤ちゃんにはちみつを食べさせるのは1歳以上になってからにしましょう。
もし誤って1歳未満の赤ちゃんがはちみつを食べてしまい、乳児ボツリヌス症になったとしても、きちんと治療すれば完治し後遺症が残ることはありません。
しかしほうっておくと最悪の場合死に至ることもあるので、赤ちゃんがはちみつを口にしてしまった時は、すぐに病院で診察を受けましょう。
ちなみにジュースのはちみつレモンやはちみつ味のクッキーなどの加工食品には、ボツリヌス菌は含まれていませんので赤ちゃんが食べても問題はありません。