母子家庭で生活保護がもらえる条件は?生活保護の計算式やうまく申請するコツ
母子家庭になると、今までとは生活が一転し、母親1人で生活を支えなくてはいけません。
しかし専業主婦だった人がいきなり母子家庭になった場合、収入源がなくなり生活に困ってしまいます。
このように生活に困った時は、生活保護を申請することができます。
しかし母子家庭だからといって、必ずしも生活保護が受けられるわけではありません。
一般に適用される条件を満たさなければ、生活保護を受けることができません。
今回は生活に困っている母子家庭のママ向けに、母子家庭で生活保護が受けられる条件や、うまく申請するコツなどについてまとめました。
このページの目次
生活保護制度とは
生活保護とは、資産や能力を使っても、生活が苦しい家庭に対して、最低限の生活を保障する制度です。
生活保護の内容は「金銭的な援助」と「今後自立していく支援」をおこないます。
厚生労働省が定めている条件を満たしていれば、誰でも生活保護を受けることができます。
母子家庭で生活保護を受ける条件
人には最低限の生活をするために、「最低生活費」の基準が設けられています。
「最低生活費」については後ほどお話しますが、この「最低生活費」の基準を満たない場合、生活保護を受けることができます。
よく誤解されるのが、資産があったり援助者がいたりすると、生活保護が受けられないということ。
これはその通りでもありますが、間違ってもいます。
しかし、資産があったり、援助者がいたりしても「最低生活費」の基準を下回っている場合は、生活保護を受けることができるのです。
資産があったりや援助者がいたりする場合の支給金額は、最低生活費から自分が得ている収入で下回った金額の差額です。
最低生活費とは
最低生活費とは、国が定めた「生活費の基準」の最低金額のことをいいます。
収入が最低生活費を下回っていると、生活保護の対象になります。
最低生活費-収入=生活保護費です。
自分の収入からの支出や、借金の有無は関係なく、月々の収入が最低生活費より下回るか上回るかが、基準になります。
母子家庭で生活保護により受けられる扶助8つ
最低生活費は、生活保護により受けられる扶助8つの合計金額です。
生活扶助
日常生活に必要な費用で、光熱費や、食費など。
住宅扶助
アパートやマンションなど、賃貸物件に住んでいる家賃にかかる費用、引っ越し費用など。
教育扶助
子供が義務教育を受けるために必要な費用、通学に必要な交通費など。
医療扶助
地用にかかる費用、入院費など。
介護扶助
高齢者の介護保険の費用。
出産扶助
子供を出産するときにかかる分娩費や入院費用など。
生業扶助
働く上で必要な資格をとるための費用や、自立を支援するための費用
葬祭扶助
お葬式にかかる費用
最低生活費の計算方法
最低生活費は生活保護によって受けられる扶助の合計ですが、出産扶助・生業扶助・葬祭扶助の3つの扶助は常日頃から受ける扶助ではありません。
そして医療扶助・介護扶助は現物支給なので「金銭」として支払われることがありません。
となると生活扶助・住宅扶助・教育扶助の3つが、生活保護で金銭として援助してもらえるものになります。
この3つの中でも生活扶助には算出方法があります、住んでいる地域や、世帯人数よって基準が異なります。
生活扶助の計算方法
生活扶助の計算方法は4つの要素があります。
【生活扶助の4つの要素】
①生活扶助第1類費・・・世帯1人1人に支給され、衣類や食費などの生活費。年齢によって金額が変わる。
②生活扶助第2類費・・・世帯全体に支給され、電気やガスなどの光熱費全般にあてられる生活費。
③逓減率・・・世帯人数が多い家庭だと、生活保護の支給額が多くなってしまうので、それを防ぐ為に生活扶助第1類費の金額にかけ合わせるもの。
④加算・・・母子家庭や、障害のある人など、特定の人にだけ加算されるもの
上記の4つの要素を加算したものが、生活扶助費になります。
【計算式】
生活扶助第1類費×逓減率+生活扶助第2類費+加算=生活扶助の支給される金額
生活扶助第1類費・生活扶助第2類費・逓減率の詳細
生活扶助第1類費と生活扶助第2類費は、住んでいる地域によって金額が異なります。
地域の級地確認は、下記で詳しく説明されています。
級地制度
【生活扶助第1類費】
年齢 | 1級地-1 | 1級地-2 | 2級地-1 | 2級地-2 | 3級地-1 | 3級地-2 |
0~2歳 | 26,600円 | 25,520円 | 24,100円 | 23,540円 | 22,490円 | 21,550円 |
3~5歳 | 29,970円 | 28,690円 | 27,090円 | 26,470円 | 25,290円 | 24,220円 |
6~11歳 | 34,390円 | 32,920円 | 31,090円 | 30,360円 | 29,010円 | 27,790円 |
12~19歳 | 39,170円 | 37,500円 | 35,410円 | 34,580円 | 33,040円 | 31,650円 |
20~40歳 | 38,430円 | 36,790円 | 34,740円 | 33,930円 | 32,420円 | 31,060円 |
41~59歳 | 39,360円 | 37,670円 | 35,570円 | 34,740円 | 33,210円 | 31,810円 |
60~69歳 | 38,990円 | 37,320円 | 35,230円 | 34,420円 | 32,890円 | 31,510円 |
70歳~ | 33,830円 | 32,380円 | 30,580円 | 29,870円 | 28,540円 | 27,340円 |
【生活扶助第2類費】
世帯人数 | 1級地-1 | 1級地-2 | 2級地-1 | 2級地-2 | 3級地-1 | 3級地-2 |
1人 | 40,800円 | 39,050円 | 36,880円 | 36,030円 | 34,420円 | 32,970円 |
2人 | 50,180円 | 48,030円 | 45,360円 | 44,310円 | 42,340円 | 40,550円 |
3人 | 59,170円 | 56,630円 | 53,480円 | 52,230円 | 49,920円 | 47,810円 |
4人 | 61,620円 | 58,970円 | 55,690円 | 54,390円 | 51,970円 | 49,780円 |
5人 | 65,690円 | 62,880円 | 59,370円 | 57,990円 | 55,420円 | 53,090円 |
【逓減率】
世帯人数 | 逓減率 |
1人 | ×1 |
2人 | ×0.885 |
3人 | ×0.835 |
4人 | ×0.7675 |
5人 | ×0.7140 |
例:大阪市(1級地-1)に住む35歳夫、妻35歳、子供2歳の3人家族の生活扶助の計算方法は下記になります。
母子家庭には母子加算がある
母子加算は、ひとり親家庭で0歳から18歳(18歳になってからはじめの3月末まで)の子供がいる場合に加算される支援金です。
児童人数 | 1級地 | 2級地 | 3級地 |
1人 | 23,170円 | 21,560 | 19,620 |
2人 | 25,000円 | 23,270 | 21,540 |
3人以降 | +940円 | +870 | +800 |
生活保護を受ける判断の為に聞かれること
生活保護の申請に行くと、担当の者から「生活保護を受けるにあたって基準を満たしているか?」色々な事が聞かれます。
資産の有無
資産がある場合、売却しなくてはいけません。
生活保護を受ける前に、まずは持っている資産を売却して、生活費にまわすように求められます。
例えば家や住宅などは資産になりますので、所持している場合は売却をしなくてはいけません。
家はすぐに売れる物ではありませんので、売れるまでの間は生活保護を受けることができます。
車も同様に売却を求められます。
しかし車は原則的に所持できないものの、体が不自由で車が必要であったり、車が無いと生活が不可能であったり、条件を満たしていれば車の所持が認められます。
援助してくれる親戚の有無
生活保護を受ける場合、周りに支援してくれる親族がいるかを確認されます。
元夫・両親・親戚などから、援助を受けられる環境である場合は、国からの援助ではなく、元夫・両親・親戚に援助をしてもらうように求められます。
仕事をしているか
仕事をしている場合、どのくらいの収入があるのか確認されます。
仕事をしていなくても、仕事にいけない理由や、今後の見通しを聞かれます。
現在受けている支援
母子家庭になると、児童扶養手当や、寡婦控除など、受けられる支援がいくつもあります。
この支援はすべて収入とみなされますので、どのような支援を現在受けているのか確認があります。
養育費の有無
養育費も上記と同様で、収入とみなされます。
離婚した後に支払われている養育費が、毎月いくらなのかを伝えなくてはいけません。
養育費が決められているにも関わらず、元配偶者が養育費を支払っていない場合は収入とみなされません。
生活保護をうまく申請するコツ
生活保護を申請しても全ての人が通るわけではありません。
基準を満たしていることが大前提です。
役所で生活保護の相談をする時に、うまく申請に進めていくコツをお話します。
1人で申請に行かない
生活保護の申請に行っても、何かと申請を受け付ける前に、断ろうとします。いわゆる「水際作戦」です。
しかし生活保護の申請を拒否することは違法です。
生活保護の申請に行く時は1人で行かず、親戚や友人、民生委員に付き添ってもらった方が良いでしょう。
水際作戦があった場合に、その行為があったことを証明してもらうことができます。
もし知り合いに弁護士がいるなら、とても心強いでしょう。
申請したい強い意志を伝える
生活保護を担当する役所の人は、できることなら申請を受け付けたありません。
「生活保護がないと生きていけない」ということを、生活保護担当員に知ってもらわなければなりません。
そのためには自分の生活状況をしっかり説明して、書類も集めなくてはなりません。
生活保護の相談や申請に行った時は、もし追い返されそうになっても、しっかりと申請の意志を伝えましょう。
生活保護の申請方法
生活保護を受けるには、申請をしなくてはいけません。
たとえ生活保護を受けられる基準を満たしていても、自分で役所に足を運び、申請しなくては国から援助をしてもらえないのです。
生活保護の申請の簡単な流れを説明します。
- 相談
- 申請
- 調査
- 決定(受給または却下)
1~4の順番で進みますので、まずは相談・申請をおこないましょう。
調査には家庭訪問や、親類の調査などがあります。
受給の決定は申請から原則14日以内(最長でも30日以内)に通知されます。
申請する場所
生活保護の申請は、現在住んでいる地域の役所でおこないます。
生活保護の相談・申請をする窓口は、「生活福祉課」や「福祉事務所」などです。
市町村によって窓口の呼び名が違うので戸惑う人もいると思いますが、役所で「生活保護の申請にきました」と伝えると、担当の係員が案内してくれるでしょう。
下記から全国の福祉事務所を確認できます。
福祉事務所一覧
また生活保護を申請したい人の中には、住まいが無い人もいるかと思います。
その場合は、今現在いる地域の福祉事務所で申請をおこなえます。
持参する物
はじめに相談だけ行きたいという場合、持参するものは筆記用具でかまいません。
スムーズに申請もおこないたい場合は、必要書類を持参しましょう。
- 印鑑
- 国民健康保険証か社会保険証
- 運転免許証等の身分を確認できる書類
- 全ての通帳
- 賃貸借契約書
- 公共料金の支払い証明書
- 直近3ヶ月分のお給与明細
- 給与以外で手当や養育費等の収入がある場合はその証明になるもの
- 資産(住宅や車、バイクなど)がある場合はその証明になるもの
上記の書類を持参し、窓口へ行きましょう。
生活保護は秘密にしてもらえる?
生活保護を受けていることを周りに知られたくないという人は多いかと思います。
生活保護を受けるにあたって心配なのが、「近所のママ友や親戚」に知られないかということですよね。
生活保護担当員や、地域の民生委員には「守秘義務」があります。
つまり生活保護を受けている人の情報は、他の人に話をしてはいけないことになっています。
そう考えると、生活保護を受けていることを周りの人に知られないと安心できそうですよね。
しかし生活保護担当員や民生委員が家庭訪問に来た時、近所の人に目撃されて、噂になることがあります。
なぜ民生委員の人が自宅に来たのかを、近所の人に聞かれることがあるかもしれません。
他にも親戚に知られたくないという人もいるかと思いますが、生活保護を受けるにあたって、まずは援助してくれる親戚がいないことが条件になります。
つまり生活保護担当員は、「生活保護申請希望者の親戚に援助ができないのかを確認する必要」があります
そのため、親戚に知られないようにするのは難しいでしょう。
せめてご近所の人にも知られないよう、家庭訪問の時間帯に注意が必要です。
生活保護で同居人や同棲している彼氏がいる場合
世帯が同じでないにしても、同居人や同棲している彼氏がいる場合は、申告しなくてはいけません。
この場合一緒に住んでいる同居人や同棲している彼氏の給料も、収入にみなされ生活保護の金額がかわってきます。
ですので籍を入れてなかったり、同じ戸籍では無かったり、住民票が違う世帯になっていても、
一緒に暮らし生活費を共にしている人がいる場合は、必ず申告をしましょう。
まとめ
母子家庭で生活保護を受けるには、まず申請に行きましょう。
申請するにあたって必要な書類をまとめておくと、何度も役所に足を運ぶ必要がありませんので、手続きがスムーズになります。
うまく申請するコツは、1人で役所に行かない事です。
1人で行くと申請ができなかった場合でも、証言してくれる人がいません。
生活保護で援助して貰える金額は、地域や収入、現在受けている支援によって異なりますので、現在住んでいる地域の役所にて問い合わせてください。
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